男になった日 体験版

Cover


【まえがき】


※[ご注意ください]



【あらすじ】


 真冬、日没後の寒空。

 誰も居ない景色の中に独り身を置いていた三十四さとしは稀有な初体験をした。

 何度も繰り返していたやられヒーローの妄想が現実になる夕闇。

 三十四はこの日、男になった。

 だが、三十四自身がそのことに気付くにはもっと時間の経過が必要だった。


【目次】


表紙

まえがき

あらすじ

男になった日

奥付

男になった日

 三十四さとしは物寂しい景色が好きだ。

 視界に人が入らないのは勿論のこと、人の気配すら無い、人が介在しているとは思えない景色。つまり、建物すら目に入らないような、そんな景色が好きだ。

 何なら、冬の枝葉も落ちてしまった妙に隙間を感じる林と草も枯れ果てた野原との境目辺りで、太く真っ直ぐな幹を持つ大木に背を預けて騒音一つ無い静寂のど真ん中にぽつねんとたたずんでいたい。

 現実にはそこまで理想的な環境は三十四が生まれ今正に育っている最中のこの場所には存在しないのだが、なるべく道から離れて、遠くの家や電線からは目を逸らして自分の世界の中にあるものではないと決め付けて、畑を人工物だと思わないようにすれば、交通量が途絶えたときに騒音が一段遠くなり、それに近い環境には身を置ける。そんな、中途半端な田舎ではある。


 冬になると日が落ちるのが早くて、やたらと寒いこともあって放課後の遊び友達は早々に解散となって散り散りに帰途に就く。

 門限に厳しくない三十四はそこからもう少し、自由時間があった。

 がやがや騒いでいたそれまでとの落差がまたピリリと効いて、耳鳴りを起こすような冷たさが静寂をより一層凍り付いたものにする。

 夕焼けはとっくに落ちて、しかし、太陽の影響がまだ完全消えたとは言い切れない夜の一歩手前は空が濃いブルーのグラデーションで、月や星が輝き出す真っ黒な夜空よりもむしろより寒々しい雰囲気すら感じさせる。


 そんな三十四独りきりの世界で、誰にも邪魔されない世界で、三十四はふと一つの思考を解き放つ。




 もの寂しい雰囲気に惹かれる三十四は、まだ誰も起きていない、日も全く昇っていない早朝に独り起きるのが好きだった。

 テレビを点けると、まだどの局も放送を始めていなくて、チャンネルをどこに変えてもホワイトノイズしか見られない。

 音量を下げて、全く同じようでいて実は全く異なるが全く同じようにしか見えない番組を流し続けているあらゆる局をザッピングしていると、そのうち一つ、ホワイトノイズではない作られた映像が映し出され始める。

 音声はまだ無いが、ノイズが消えて、放送が始まったのに逆に静かになる。

 しかし、そのうち放送局のアナウンスが開始され、徐々にいつものテレビの賑やかさを発揮し始める。

 賑やかになりそうなところで三十四は他の局に切り替えた。

 すると、まだ放送を開始していない局が見つかり、三十四はそこでまた、ホワイトノイズから音声無しの静止画像へと移り変わり、アナウンスが開始され徐々に煩くなって行く過程を見守る。

 やがて、局をどこに切り替えても既に放送が開始されていたりして、全ての局の始まりを見届けることはどうしても出来なかった。


(こちらは体験版です)


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男になった日


OpusNo.Novel-092
ReleaseDate2024-12-17
CopyRight ©山牧田 湧進
& Author(Yamakida Yuushin)
CircleGradual Improvement
URLgi.dodoit.info


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(こちらは体験版です)

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