ナ゛キ大将 (体験版)

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【まえがき】


※[ご注意ください]



【あらすじ】


 ジムで気になっていたその彼は同じ筋肥大志向の同志だった。

 肉体の仕上がり具合は上々なものの絶対的にはまだ僕よりやや小柄だった彼は「デカくなりたい」とがむしゃらに頑張る。

 地の優しさを隠すように勝ち気な表情を作り、常に背伸びをし続けているような感じから、彼には『ガキ大将』のような印象を抱いていた。


 だが、彼の頑張りはちょっと普通じゃなくて、いつも涙を零すほどに自分を追い込んでいた。

 そして、そんな頑張りは『あっち』の方にも……?

 『あっち』の方も強くなりたいと、あっけらかんと話す彼に、うっかり心の声を漏らしてしまう僕。

 図らずも僕は彼の『あっち』の方の頑張りも、目の当たりにすることになった。


【目次】


表紙

まえがき

あらすじ

第1章 泣くほど頑張るガンちゃん

第2章 『あっち』も頑張るガンちゃん

第3章 ガンちゃんのもっと良いとこ見てみたい

奥付

第1章 泣くほど頑張るガンちゃん

 身体がそこまで大きいわけではない。

 でも、勝ち気な表情がとても印象的だった。


「……デカくなりてえ」

 がむしゃらにトレーニングマシンを動かしていた彼に思わす話し掛けてしまったとき、彼はこちらを見上げてカッと目を見開いて、まるで怒ったかのように顔を赤くした。

 そして、見上げているのに上から睨み付けるような視線をこちらにぶつけた後、少し顔を背けてそう呟いた。

 ……って、そもそも僕はただの会員であって、スタッフでも何でも無い赤の他人だったわけで、そんな僕がいきなり話し掛けたのを不快に思われたとしても仕方無いところではあったのだが、帰ってきた言葉は距離を取る社交辞令のご挨拶ではなく包み隠さぬ彼の本音だった。


 なんでも、当時の彼が密かに目標としていたのが僕だったらしいのだ。

 といっても、僕だって決してそんなに大きいと言えるほどのものでは無い。

 いや、むしろ、当時からして筋肥大の仕上がり具合は彼の方が既に上回っていたように思う。だって、今思えばそんときだって十二分に格好良かったもの。


 僕は彼よりも、ただ単純に、ぬぼーっと曖昧に大きいだけだった。

 でも、そんな僕が知らないところで目標なんてものになっていただなんて。

 彼からしたら、手の届かない存在とまでは行かず、頑張れば全く不可能というわけではないレベルであろうところにちょうど居たのがたまたま僕だった。

 と、いうことなんだろうなきっと。


 ……なあんて、そんなことまで僕が知っているということはそう、彼とはその後打ち解けてトレーニング仲間となり、今や一番の親友と言っても良いくらいの親密な仲となっているのだ。


 彼の名は岩流 賢士(がんりゅう けんじ)。通称『ガンちゃん』。

 凄くゴツゴツとした硬そうな名前だ。


 ここのジムでは筋肥大志向のスタッフさんが居なかったこともあって、僕とガンちゃんは良く時間を合わせ、トレーニングパートナーとしてお互いにお互いのトレーナー的役目もこなしていた。


 ガンちゃんは絶対的な身体の大きさこそそこまで大きいわけではなかったのだが、体型およびその筋肉の付き方は立派なもので、特に鍛えられた首肩から上腕がボッコンボッコンに盛り上がっていて、そこにぶっとい血管の筋がいくつも走っていて相当に厳つい。

 背がそこまで高くはないから『ゴツいなあ』とひたすら感心するレベルに収まってくれるけど、もし、この肩が目線の位置にまで来てしまうようだったらまず身の危険を察知して逃げてしまうかもしれないところだ。

 その大きな肩もあって背中は非常にぶっとい逆三角形。前面は皮膚の伸び代を全て使い切ったかのように充実した膨らみの胸筋。そして、締まっていながらもやや飛び出す腹と腰。大胆な臀筋にコブ付き脹脛。

 端的に言って厳ついグラマラスだ。


 顔もそこまで大きいわけではないから……で済んでるけど、若干パーツが厳つい。

 特に、寄せているつもりがなくても眉間からおでこに掛けての皺が大きく縦に窪んでいて、必要以上に彼を強面にしている。

 でも、実はその額の窪みはどちらかというと『笑窪』的なもので、彼が眉間に皺を寄せるような顔筋の動きをしていなくても常に浅く窪んでいる、といういわゆる元からそこだけ肉も脂肪も付き難いエリアであるっぽい造形なのだ。

 他がそこそこ満遍なく肉付きが良いから、ふっくらとまではいかないけれども割と面の皮が物理的に厚い印象があるのだが、その厚みの分、窪みが目立って厳つさが増しているような気がする。

 土台となる首が太いうえに首そのものが短く、さらに僧帽筋がボカンと盛り上がっているせいで顔を中心とした肩首頭の安定感と視覚的強さが半端なく、さらに厳つさを上乗せしている。

 それでも、ベースはやや精悍寄りの温和な顔付きで、油断(それはただ単に彼にとっての油断でしかない)しているときの彼は全く優しげなマッチョマン顔をしている。


 が、彼本人はその地の優しいイメージをあまり良しとはしていないのか、ときおりふと気が付いたように意図的に顔に力を込める。

 そうやって、なぜか常日頃から意識して顔を作っている結果、妙に勝ち気な表情をしていることが多くて、その若干背伸びし続けているような感じがやや『ガキ大将』を思い起こさせた。

 ツッパっている、という印象にはならないところが彼のキャラクターだ。

 デカさや強さに拘るところなんかもちょっと大人気なくて、ちょっぴり子供っぽくも感じたものだ。

 でも、彼にとってはそれが最大のコンプレックスであり、最大のモチベーションの源であり、一生のテーマなのだそうだ。

 だから、思わず『無茶すんな』って度々言ってしまうほど、彼はがむしゃらに頑張る。


「やったほうがデカくなれるんだろ!?

 例によって下から見上げるのに上から睨み付けるような視線でキッと目を見開くガンちゃん。

 瞼と眉の距離が近いせいであまり大きく目を開けられないのか(いや、僕が見たことが無いってだけで本当は普通に大きく開けられるのかもしれないけれども)、目を見開くときのガンちゃんは眉尻を思いっ切りぐいっと上げるのたが、その割には瞼が付いてこなくてやや半開きのまなこだ。

 それでも、真ん丸の黒目が瞳の底辺に埋もれていて、黒目の上の白目が見えるかどうかというところまで瞼を上げるから上三白眼みたいな瞳の形になる。


「そりゃそうだけど、そんなに無理s」

 気持ちは分からなくもないけど、今のガンちゃんの限界を超えているような気がして心配になっている僕の言葉を最後まで聞かずに、

「だっだらやる!」

 ガンちゃんは即座に力を込めて、筋肉を大きく膨らませた。


 身体だけでなく顔まで真っ赤にして、鬼のような形相をしながらガッシャンガッシャンマシンを動かすガンちゃんは目まで赤くする。

 そして、噴き出す額の汗よりも速いスピードで、下瞼にどんどんと涙を溜めていった。

「無茶すんなよ」

「ちくしょう! コノヤロー!」

 ぷるぷる震える腕で、溜まった涙が振り落とされる。

 ガンちゃんはいつも、泣くほど自分を追い詰めた。


 それを初めて間近で見たときは物凄くビックリした。

 怖いほどの険しい表情を浮かべながら、そこに涙まで浮かべてくるというギャップ。

 あまりにも印象深く脳裏に焼き付いてしまって、ガンちゃんの顔が頭から離れなくなった。

 そして、ガンちゃんには申し訳無いところではあるのだが、つい、その、ガンちゃんをオカズにシてしまっている自分が居た。


 ずっと思い浮かべ続けてその表情に慣れてくると、『怖い』という印象は次第に薄れ、代わりに台頭したのは『格好良い』だった。

 キリッと鋭い眼光は『かくありたい』という願いだけでなく現実のものとせんとする決意の眼差し。

 涙は常に限界の枠を一歩踏み出している証のように思えた。


 動機はともあれ、ここまで愚直に頑張れる人ってなかなかお目に掛れない、と思った。

 いや、ここまで頑張れるだけの動機って、それだけで立派なものなのかもしれない。

 子供っぽいとか感じていた自分を恥じた。

 僕の方が、変に大人の真似事をして冷めた目を向けていたのではないか。


 とはいえ、身体がぶっ壊れてしまうほどの無茶は本当に本末転倒なので、そこまで無茶しようとしたらこっちも本気で止めるんだけど、とにかく彼の『やる』『やろうとする』力の強さは尊敬に値した。

 いや、尊敬のレベルを超越して、憧れになった。

 僕は泣くほど頑張るガンちゃんを、いつの間にか好きになっていた。


「いや、俺はこの癖気に入らないんだ。泣いてるつもりなんか全く無いのに、いつも勝手に涙が出てきやがって。これじゃまるで俺が弱虫みたいに見えるじゃないか」

「ガンちゃんは強い男だよ」

「そ、そうか? まあ、晴男がそう言ってくれるなら嬉しいけど。でも、よく知らんやつは俺のことを泣き虫にしか見てないだろ」

「よく知らんやつのことなんてどうでも良いじゃん」

 あ、なんか途中で『晴男』って晴れ男っぽいワードが出てきましたけど、これ僕です。この漢字で『はるお』じゃなくて『はるな』って読ませる難(じゃこの)読(み方は)ネームです。男を『なん』って読ませて『ん』を端折った的な?

 なんでも、男の子が産まれても女の子が産まれても『はるな』という名前にしたかったらしくて、僕が男で産まれちゃったのでなんとか『はるな』になるように字を当てた、らしいです。




 元からガンちゃんはストレートな物言いをするタイプの人間ではあったけれども、仲が良くなってくると、ガンちゃんのあっけらかんぶりは感心するほど見事なもので、こと僕に対しては何でもかんでも包み隠さずに話してくるようになった。

 例えばそれが、普通だったら話し難い下の話であっても。


「俺は『あっち』の方ももっと強くなりたいんだ」

「『あっち』、……って?」

「『あっち』で強くなりたい、と言ったら『エッチ』のことに決まってんだろ?」

 僕も多分そうだろうなとは思っていたのだけれど、最初はわざとすっとぼけておいたんだ。


 だって、正直あんまりその手の話はしたくなかったから。

 ううん、もし僕にもガンちゃんと同じくらいあっけらかんと話せる能力があったとしたら、全然話す。むしろ、ノリノリで話す。積極的に話す。自分からバンバン話振るよ。


 でも、ダメなんだ。

 マイノリティーだと分かっている人間がその手の話に加わる、というのは地獄の所業だ。

 本音なんか喋ってしまったら、その先一生そのことが付いて廻るか、もしくはその場で関係が壊れて消える。

 嘘で塗り固めて同調するのは、地味に回復できないやられ方でメンタルが傷付いてダメージが積もっていく。


 特にガンちゃんが相手じゃダメだ。

 なぜなら、僕の心の中にガンちゃんを好きになってしまっている自分を見つけてしまったからだ。

 本音を言って、その先目を合わせてもくれなくなる未来は、想像するだけで辛い。

 ただただ同調してやり過ごすのは、ただただせつないよ。


 でも、ね。

 ガンちゃんがそういう話をした、ってだけでなんだかうずいてしまう自分も居るんだ。

 だから、

「そこは別に強くなくても良いんじゃないの?」

 自分のことはなるべく話さないで済むように聞き手に徹しようと思った。


「いいや、やっぱりヤるからには相手にイッた演技なんてさせたくないじゃん」

「そこはぁ、前戯を増やすとか工夫すれば良いんじゃ?」

「もちろんそういうこともするさあ。それでも、やっぱり心ゆくまでがっつり本番したい、ってコも居るんだよ」

「あ、まあ、そうか。そういうコも居るかぁ」


 僕は心の中で激しく同意していた。

 はい! はーい! はーいっ!! 僕も心ゆくまでがっつり本番したい派でーす!

 ……って、言えるわけがないんだよなあ。

 同意する相手もガンちゃんではなくて、ここには居ないどっかの娘さんだろうし、ね。


「強くなるために鍛錬したいけど、そんなこと誰かに頼むわけにもいかないしなあ」

「寸止めの練習とか自分でやったら良いんじゃないの?」

「いいや、結局それだと本番のときと環境が違い過ぎるからあんまり意味が無いんだよ」

「そういうもん?」

 ガンちゃんの顔が前のめりになって、一段と顔に力を込めて、額の縦皺を深くしながら厳つさを強調した。


「考えてもみ? 仮に自分で寸止め練習とかしたとして、パッと手を離して我慢できたとするだろ? 本番中にパッと離せるか? って話よ。アソコん中で我慢できなきゃ意味が無いじゃん」

「握ったまま我慢してみたら?」

「それでも全然違うじゃん。腰も動かしてねえし」

「うーん、そういうものなのかねえ」

「本番て本番だから本番って言うのであって、本番の練習を本番でやるなんて器用なことはできる機会そのものが無いんだよなあ」

 ガンちゃんはガンちゃんらしからぬ哲学的な(哲学的か?)小難しい論理を展開する。

 ごめん、今のはガンちゃんに対して失礼なもの言いだった。

 親しくなった今では、僕はガンちゃんがただただ真っ直ぐなだけのガキではないことくらい、とっくに気づいているよ。


 そして、僕は閃いたかのように提案してみる。

「あ、それで良いんじゃない? 場数踏んで強くなっていけば」

 だが、その僕の提案で、ガンちゃんの前のめりと意図的に作った厳つい顔が解除されてしまった。

「それができれば苦労はしないんだがなあ」

「何か問題でも?」

 ガンちゃんは前のめりを止めて踏ん反り返ったままだったが、おもむろに腕を組もうとして結局腕が太過ぎてちゃんと組めないまま、顔だけが厳つ顔に戻ってキリっと僕を睨んだ。

「俺、本番のときは本番に一所懸命で、練習とかしてる余裕無いんだわ」




 ズキューンっ!

 と前立腺(ハートじゃねえのかよ)を撃ち抜かれたみたいに激しく疼いてしまった。

 やべえなガンちゃん、僕超ムラついてグッと来ちゃって危うく射精しちゃうところだったよ。

 そんな格好良い顔決めといて、そんなエロいこと言うなよ。もっと言って欲しくなっちゃうだろ! なんなら、もっと近くで囁いてもらっても、……うんうん。


 そうだった、そうだった。

 ガンちゃんは一所懸命の男なのだ。

 僕は容易に、本番に一所懸命なガンちゃんの姿をありありと思い浮かべることができた。

 あーやべー、ガンちゃんに一所懸命ガッつかれながら本番されてみてえよお。

 一体どこの誰だよ、そんな羨ましい思いができてるってコは。

 代わってくれよ、その場所を!


 本番の練習、っかあ。

 練習でも良いから、僕を使ってくれたりしないかなあ?

 いや、実際のとこ練習だけだと余計に未練が残って、さらに辛い思いしそうで怖くもあるんだけど。

 でも、僕、ガンちゃんの男気にはセクシーガンガン感じちゃってて、筋トレとは違う触れ方をしてみたい、って欲求はもう、それはそれはもう、むっちゃ溜りまくってるんだ。


 さらっと言えたら良いのになあ。

「僕で練習してみる?」

 なあんて、なあ。

 AVじゃあるまいし、んなこと言えるわけが無いんだよなあ。

 しっかし、僕の妄想力も果てしないなあ。


(こちらは体験版です)

第2章 『あっち』も頑張るガンちゃん


(こちらは体験版です)

第3章 ガンちゃんのもっと良いとこ見てみたい


(こちらは体験版です)


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ナ゛キ大将


OpusNo.Novel-075
ReleaseDate2021-06-04
CopyRight ©山牧田 湧進
& Author(Yamakida Yuushin)
CircleGradual Improvement
URLgi.dodoit.info


個人で楽しんでいただく作品です。

個人の使用範疇を超える無断転載やコピー、
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(こちらは体験版です)

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