ケツマン先生 体験版
【まえがき】
※[ご注意ください]
【あらすじ】
レスリング部の顧問までしていて、必ず体育教師と間違われるガタイを持つ物理教師、利尻 満明(りしり みつあき)。
彼はその名前から、陰で『ケツマン先生』と
そんな部に育った、利尻を超える逸材、棚田 光明(たなだ こうめい)。
数々の大学からの誘いを全て断り、卒業後は角界へ入門という前途洋々たる若者だったのだが、こともあろうに顧問の担当教科である物理で赤点を取っていたのだった。
光明のために一人きりの補習を行う利尻は、彼の真剣さを引き出すために『オナ禁』を命じる。
だが、そんな命令など聞いてはいないだろうと高を括っていた利尻は、光明が真面目に4日間もオナ禁していたことを彼の切羽詰まった直訴により知ることになる。
それから光明の取った言動とは?
どうする利尻? どうなる『ケツマン先生』!
俺の名は利尻 満明(りしり みつあき)。高校物理の教師だ。が、体育教師と良く間違われる。
無理もない。
あらゆる体育教師の体格を凌駕し、何の因果か、他の体育教師を差し置いてレスリング部の顧問なんてものを任されている。
これで、『物理』だ、って言っても、『魔法が使えないなら物理で殴れば良いじゃない』って言う方の『物理』だと思われるだけだったりする。
それも、生徒のみならず、大人たちまでも同じ反応になるのが若干忌々しいところだ。
生徒、特にレスリング部の奴らには、別の
通称『ケツマン先生』。
『満子』という名前を『マン○』と言って誂うガキと全く同じ寸法である。
しかし、あのアホガキどもが『満』はともかく、『尻満』のキーワードにそう簡単に気がつくはずがなく、恐らく、誰かが偶然、俺の名前の前後が隠された状態を見て、発見したのだろう。
だが、じゃあ、普段から俺はそうやって生徒たちにバカにされているのかというと、そうではない。
『魔法が使えないなら物理で殴れば良いじゃない』よろしく、『説教が通じないなら物理で殴……』、は流石に体罰で懲戒処分にされてしまう昨今であるので、そんなことはしない。
が、物理の法則を身体で教えてやる。痛いほどに。
『関節技は反則』とか、急に真面目ぶって抗議してくるようになるが、知ったことか。
関節技自体を目的としているのではなくて、フォールに持っていくための技術の一つだ。
それを物理で教えてやっているんだから、感謝しろ。
というわけで、陰でコソコソ言われることはあるものの、表立って言う奴は軒並み前述の扱いになるので、まぁ、大抵は一度やってやれば表面上大人しくはなる。
しかし、力でねじ伏せられているから、現状なんとか統制を取れているという感は拭えない。
これで、もし、俺でも通用しないような選手が育ってしまったら、そいつに好き放題やられてしまったら、一気に部は崩壊して、ただのやんちゃ集団に成り下がってしまうだろう。
そして、今年。
ついに、俺でも通用しない選手が育ってしまった。
棚田 光明(たなだ こうめい)。
インターハイで3位、国体ではなんと準優勝を獲りやがって、地元では大フィーバーだ。
注目を集める中、奴は数々の大学からの誘いを断り、角界への入門を決めた。
とはいえ、こいつは素直な奴で、俺を誂うことはたまにあっても、バカにするようなことは決してしてこなかったので、部の崩壊なんていう心配は杞憂だった。
体格的にはまだ俺の方が上回っている部分もあるが、奴はまだ育ち盛り。きっと、すぐに全ての面で越されてしまうことだろう。
奴の前途は洋々だ。
だがしかし、その手前にちと問題がある。
こいつ、物理の教科で赤点なのである。
よりにもよって、俺の担当教科で赤点を取っていやがるのである。
そう、こいつは、せっかく強くて、それなのに可愛い奴なのに、少々アホなのだ。
こんなとき、大抵はちょこっと配慮してやって、ギリギリ通過させてやるのが普通なんだろうな。
だいたい、奴にはもう輝ける未来への道筋がちゃんと出来ている。
そんなところに『赤点で落第です』なんて、逆に周りから非難轟々だろう?
だけどな。
俺はちょっと違うと思うんだよ。
いや、どうでもいい奴(なんて言っちゃいけないんだが)なら、どうでもいいから、赤なんて面倒臭いことしないでとっとと卒業させるよ。
奴だからこそ、可愛い奴だからこそ、俺、ちゃんと教えておきたいことがある。
だから、俺、補習で奴一人を教室に残させた。
これは俺もタイムカード押した後でやる、残業記録を残さない、俺の個人的意思で行う個人授業である。
「うーんと、えーっと……」
棚田 光明が頭を抱えている。
卒業間近で、進路も決まっていて、周りから期待もされてチヤホヤされて、ってそんな状態なのに、よく俺の補習に文句も言わず付き合ってくれるものだと関心する。
元よりゴツい割に可愛い表情をする奴だが、こんな性格だから余計に可愛い。
これでもうちょっとだけでも理解できる頭が育ってくれればなぁ。
正直、補習と言っても、俺はこの補習で学校お決まりのテスト対策なんてやらせるつもりはなかった。
俺はな、思うんだ。
奴は天性の『体格』、天性の『体力』、天性の『勘』の良さを伸び伸びと育てて活かすことで、格闘技の才能を開花させた。
俺はそこに関しては何の文句も無い。いや、素晴らしいことだと思う。
だけどこれは、伸びて行く、育って行く人間だからこそ、それだけでも通用した、ということであって、体格や体力の成長はじきに止まり、衰えのフェーズに入る。
そうなったときに、頼りにするのが『勘』だけでは、思い通りにならない歯痒さで苦しむことになるんじゃないかと心配なんだ。
だから、お前には物理の基礎を改めて教えておきたい。
定量的なことはこの際置いておく。
定性的なことを違和感なくすっと肉体と馴染ませて考えることができるように、『体力』の限界にぶち当たったときに、『物理』で乗り越えられるところもあるのだということを、後々になってでも良いから気付ける頭に、なっていて欲しいのだ。
と、俺の想いは至って殊勝なわけだが、それをストレートにぶつけたところで、受け止められるだけの頭が今の奴には(多分)無い。
なので、
「これが分かるようになるまで、オナニー禁止な」
ってプレッシャーを掛けた。
「ぇええっ!?」
光明はまるでこの世の終わりかのような絶望感を思いっきり顔に出した。絶望顔をしても瞳がキラキラと輝いているところに無限の若さを感じるが。
おいおい、お前、普段からコキまくりです、って自白してるぞ、その顔は。
っつか、そうか、やっぱ、コキまくりか。
大人を超えるゴツい身体して、限界を知らない若さを持って、欲望の赴くままに無邪気にコキまくるのも当然ってとこか。
こんな可愛い顔しちゃってるのになあ。
人間社会だからまだこいつは子供扱いだが、これがもし野生生物の世界だったら繁殖し盛りのピークだからな。
見ているだけでこっちまで若返るような錯覚がするもんな。
「えええ、じゃない。お前の未来のために、今ここでちゃんと理解しておけ」
それから4日。あれから毎日、放課後に棚田だけを教室に残して補習を続けている。
「これならどうだ? これならお前にも分かりやすいだろ?」
手を変え品を変え解説を試みているのだが、手応えが薄い。
それに、なんだか、光明の顔が日に日に
奴にはまだ早かったのだろうか?
俺は、奴に余計なお節介をしてしまったのだろうか?
そう思いながら説明を続ける俺の手を、光明は握って止めた。
「?」
「先生、オレもう無理すっよ」
俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
が、
「オレ4日も我慢したことなかったら、もう、一日中アレのことばっかり考えるようになっちゃって、勉強どころじゃないっすよぉ」
「なに!? こ、光明、お前、真面目にオナ禁してたのか!?」
俺はさっきとは別の申し訳ない気持ちでいっぱいになったのだった。
「な、なんすか、先生。先生が言っていたアレ、冗談だったんっすか?」
「い、いや、お前に真剣になって欲しくて言ったから、決して冗談ではなかったんだが、まさかちゃんと約束守ってるとは思わなくて……」
「酷いっすよ、先生!」
光明の純粋さを
だがしかし、その先の光明の言葉は、教室の窓を斜め上に、逆に太陽を射抜くかのように俺の想定範囲を超えて行った。
「オレもう我慢できないから、ここで出して良いっすか?」
(こちらは体験版です)
ケツマン先生
OpusNo. | Novel-054 |
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ReleaseDate | 2019-02-11 |
CopyRight © | 山牧田 湧進 |
& Author | (Yamakida Yuushin) |
Circle | Gradual Improvement |
URL | gi.dodoit.info |
個人で楽しんでいただく作品です。
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(こちらは体験版です)
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