イクもんか! (体験版)

Cover


【まえがき】


※[ご注意ください]



【あらすじ】


 聖なる夜にラヴラヴな痴話喧嘩を。


 伊久 文佳(これひさ ふみよし)はまだ十分に若いと言える年齢ながらも外へ向こうとするバイタリティを失いつつあったが、とある店にだけは比較的頻繁に通い詰めていた。

 お目当ては憧れのひと、保鷹 晃(やすたか あきら)。

 彼が来店しそうなタイミングを予想して、期待して店に出向くのに、出会えたとしても会話すら無く、背中越しに見ているだけ。

 でも、それ(だけ)でも良いと思っていた。


 クリスマス・イヴなんて独り者が出歩くような時間じゃない、と思いつつも気まぐれで店へと足を運ぶ文佳。

 流石にこんなときに彼が来るはずもな……いはずなのにやって来た! それも独りで!

 店内の客は二人きりで、その雰囲気は自ずと次第にデートのようになり、そしてついには夢のような『お持ち帰り』へ。


 クリスマス・イヴならではの、ベッタベタで、だけどちょっとディープな『ラヴ・ストーリー』をどうぞ。


【目次】


表紙

まえがき

あらすじ

イクもんか!

奥付

イクもんか!

 騒がしいのはきら、……ぃゃ、苦手だ。

 元々は、そんなに独りや静寂を好むような性格では無かったはずなのに、今はその方が気分が落ち着く。

 熱気やバイタリティに憧れることもあるけど、今の僕はそれに負けてしまう。


 僕個人だけに向けられたわけではない何気ないポジティブな言葉でさえ、直径5mのフライパンになって僕を殴り倒してくる。

 煌々と照り付ける全スペクトルMAXの光線が僕の影さえ無くすほど全方面から降り注ぐのに、いきなり僕の周囲5mだけが真っ暗になって、僕の意識も、真っ暗になるのだ。

 多分、そこには悪意の1mmも含まれてはいないのだろうけれども、『○○なら』『○○じゃなきゃ』『〇〇すべき』という言葉で、僕はいつも切り捨てられた側の感情を抱いてしまう。

 そんな癖が染み付いてしまって、もう大分時間が過ぎた。


 ……それでも、憧れを全て諦めたわけではない。


 こうしてたまに来る薄明かりの空間。大人の社交場。

 そこに柔らかい光を放つ、僕の憧れの人が居る。


 決して、目も眩むようなギラッギラのシャイニーではない。

 夜の静まりで初めてその存在に気付くような優しい光。


 僕は彼の光なら受けられる。

 彼の光は僕に向かって影を作らない。

 彼の影に打ちのめされる心配は無いのだ。


 だから、僕はこうしてときどき夜の店へと繰り出し、彼の存在を確認しては、その優しい光を背中に感じながら穏やかな幸せのときを過ごす。


 今夜もまた、彼を背中で見詰めながら、弱い酒をちびちびとやることができた。

 ちょっとばかし、彼の周りのシャイニーずが刺々しいのだが、振り向かされることさえ無ければそれほど影響は無い。

 僕はただ、そこの空間を共有するだけの傍観者。空間は同じだが、世界が違う。

 彼および彼らの世界とは背中一枚隔てた別の世界に、僕は常に存在する。

 そこに彼らとの接点は無いのだ。


 彼との接点も無いけど……


 でも、それで(も)良いんだ。




 クリスマスシーズンはなぜか、あらゆる人がそこに照準を合わせて行動し、あらゆる物がそこに照準を合わせて移動し、集中する。

 なんたって、クリスマスイヴからクリスマス当日にかけての一夜は年間を通しても最大級の繁殖タイム。満月どころの騒ぎじゃない。

 ありとあらゆるところでカクカクシコジコドプドプ。

 解き放たれる精子の数は果てしない。


 そんな日の一人にとっては、触れる外界の全てが一人で居ることを無意識のうちにも差別してくる無慈悲さに溢れている。

 普段はそんなに一人であることを気にしない僕でも、嫌でも孤独を感じさせられる。無理やりにでも感じさせてくる。

 だから、あらゆる外界の情報を全て遮断して、何か、気がついたときにはもうそのじ(゛)こくは過ぎ去っていた、みたいになるように没頭できることをしているか、あるいは早々に寝るかでもした方が良いんじゃないかと思う。


 でも、今年の僕は、ちょっと違っていた。


 何を思ったのやら、さしたる感情の起伏が起こっているわけでもない素の状態のうちから、淡々といつもの店へと足を向けて歩を進めていた。

 周りにやたらと点在するカップルやらカップルになりたがっている人やらを視界に入れないように、あるいは、ただの背景として捉えるように意識しながら、ホワイトになりきれないグレーなクリスマスイヴを一人で歩いていく。


 こんな日の店に働きに出る側は、逆に、『仕事だから』と言い訳が立つから良いなと思う。

 でも多分、付き合っている人が居るという店員はシフトを外れようとしているのだろうな。

 競り負けて仕方なく『出』になっている人も居るのかもしれない。幸せが有り余っているようなところなら。


 夜も浅いうちならば、(バ)カップルが山ほど闊歩していてうんざりするのかもしれないが、そのうちに2人抜け、4人抜けとさみしくなってきて、独り者の店員と独り者の客だけの閑散とした空間になる。まるで、もうずっと前から続く閉店間際のように。

 派手派手しく飾られた電飾の賑やかさとは裏腹に、とてつもなくうら寂しい気分になるだろう。

 でも、その、ちょっと自虐的ですらある『置いてけぼり感Max』の孤独を、味わってみるのも乙なもんかもしれない。

 そんなふうに僕は気まぐれを起こしたのだった。


 思っていたとおり、最初は『クリスマスパーティー』よろしく賑やかな雰囲気にカップルだらけの様相で、独り者は間違いなく場違いな印象バリバリだったわけだが、驚くほど綺麗に偶数単位で減っていくメンバーにパーティは早々お開きとなり、片付けられなかった半端者がここに一人。僕だけが苦笑いでカウンターに残るという展開になった。

 嵐の後の静けさに気持ちも白けた僕は、ここバーにも関わらずコーヒーを注文。

 同じく白けた店員も、ささっと酒を戸棚にしまった。


 ぼんやりとカウンターテーブルの隅っこの木目を眺めながら、カップルがパーティを抜けていく場面を次々と思い出す。

「凄いわね。あれ全部今頃ズッコンバッコンやって射精しまくってんのよ」

 僕の中のオネエが声に出さずにぶっこく。

 ふと泳がせた目線で店員と目が合ってしまって、本音隠しの愛想笑いを浮かべながら。


 もし、僕が普段からもっとはっちゃけているような人間だったなら、店員の方から同じようなセリフを言ってきてくれていたかもしれない。

 でも、表向きの僕はまだそこまでお下劣な部分を出すことが出来ていなかったのだ。


 さて、ここまでだいたい想定どおりに事が運んできたわけで、街にはまだたくさんの人が居るはずなのに、妙な静けさだけが漂うという不思議な孤独感を十分に堪能したわけだが、一点だけ考えていなかったことがあった。

 ……店内に店員と僕……だけ。……気まずい。

 まぁ、僕としては放っておいてくれて全く問題は無いのだけども、店員さんは接客が仕事だし、何かと気を使うだろう。

 それも仕事だ、って言っちゃえばそれまでかもしれないけど、何かしら話の取っ掛かりとか、話題探しを延々と頑張っている感じがこちらにもヒシヒシと伝わって来て、なんだか居づらい。


 かと言って、ここでスルリと抜けて、店内を店員さん一人にする勇気もなかなか湧かないのだ。

 いや、本来そんなの気にせずに出て行っちゃって良いものだ、ってのは頭では分かってるつもりだ。いっそ、その方が店員だって楽になるってことも。

 でも、タイミングが掴めない。

 いや、本来タイミングを計る必要すらないことも分かっているつもりでは、あるんだけれども。


 言葉が先か、行動が先か。

 悩んだ挙げ句、悩み疲れて、『どうでも良いや』ってやっとなってきたところで、僕はテーブルの端に手を掛けて腰を浮かしかけた。

 そのとき。

 まさかの来客が。


 入れ替わるチャンス? それとも、少しは留まって改めてタイミング見計らった方が良い?

 そんなふうに迷いながらも、思わず横目で入り口の方を注視してしまうと、そこにはなんと!


 彼の姿が。


(こちらは体験版です)


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イクもんか!


OpusNo.Novel-052
ReleaseDate2018-12-19
CopyRight ©山牧田 湧進
& Author(Yamakida Yuushin)
CircleGradual Improvement
URLgi.dodoit.info


個人で楽しんでいただく作品です。

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(こちらは体験版です)

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