超人幽閉! ~精巣ドーピング~ 体験版
【まえがき】
※[ご注意ください]
【あらすじ】
世界に通用しなかったはずの種目で、その実力をずっと隠したまま、千年でも塗り替えられないと言われるほどの大記録を突然打ち立てた群星は全世界に波乱を巻き起こした。生命の危機にまで発展し、最終的には保護という名目で自国に幽閉されてしまった。しかし、その逸材をそのまま葬り去るわけにはいかず、あらゆる研究の対象とされ、ついに、そのDNAの保存と継承のために大量の精子提供を要求されることとなる。
現在の全盛期の活力溢れる精子を、常人では到底無理なほど大量に提供しなければならない。
それを実現するために行われた施術が『精巣ドーピング』だった。
かつて、ドーピングを一切せずに大記録を打ち立てた超トップアスリートが、今度はあらゆるドーピングを尽くして、また別の記録を打ち立てに行く。
【主な登場人物】
【目次】
どうして、こんなことに、なってしまったんだ……
飛び抜けた素質と才能と努力が、……身を滅ぼすことに、なるなんて……。
ある時期から僕は、公式競技の場では自分の力をセーブするようにコントロールしていた。
記録はいつでも出せる。それなら、僕の好きな時に、好きなように出せば良い。
少しずつ記録を更新していって、何回も何十回でも世界新をマークする。そんなやり方も良いだろう。実際にそういうふうにした人は存在する。
逆に、ここぞという舞台でいきなりぶっちぎるというのも一興だろう。そんなやり方をする人など通常いない。皆が皆、ギリギリ目一杯のところで限界を競い合っている。それが普通の世界記録というものだからだ。
だからこそ、僕は後者を選択した。
いつでも決勝には滑り込むようにして、しかし平凡な記録で終わるようにする。
代表選考のラインも十分にクリアできるような記録は出すが、決して注目されるような記録は出さない。
そして、最高の舞台への出場権を獲得。そこで初めて、全てを発揮する……。
その過程は決して気分の良いものとは言えなかった。
報道関係者は僕のことを万年2位ならぬ『万年3位』扱い。
いつも決勝には滑り込んでくるが平凡な記録で終わる僕のことを『若手の芽を摘む邪魔者』と位置付けて、僕のイメージを常に悪化させようとしてきていた。僕だって年齢的にはまだ若手と言われても良い側だったはずなのに。
そんなだから、でも、逆に、練習を邪魔されなくて済んで良かったのかな。
むしろ、まるっきり誰も注目してこなかったから、練習でちょっと本気を出しちゃってもバレる心配も無くて気は楽だったかもしれない。
だいたい、ファンの娘なんてものも全然来なかったからね。……いや、悔しくて言っているわけじゃないよ、本当に。
僕のことをハンサムだと言ってくれる人もいたけど、特別甘いマスクというわけでもなかったので女性人気もまぁ、無かったと思うよ。男性人気? 『万年3位』だもん、無い無い。
そして、『
そんな風向きが変わったのが、この最高の舞台で決勝へと駒を進めたとき。
国内で『万年3位』の僕は予選敗退になるものと勝手に決め付けられていたが、この予選で初めて国内最高記録を出し(出さないと決勝に進めそうになかったのだ)、国内選手で唯一人決勝へと進んだ、そのときだった。
急に応援ムードを高める報道陣と、それに良いように煽動されるニワカの人々。
手のひら返しとは正にこのこと、ということなんだろうが、その返し方ではまだまだ手ぬるいということを僕はこれからその全員に向かって示してあげようと思う。
なんなら、その手のひらもう360度回転させて、一回転半の手のひら返しにさせてやろう。
さあ、僕が選択した、全てを発揮する最高の舞台へ……。
やった! やってやったぜ!!
スポーツ競技大会の頂点で、ぶっちぎりの世界新記録を打ち立ててやった。
今後100年は、いや、もしかしたら、1000年でも塗り替えられない、あり得ない記録だと言わせてやったぜ。
様々な大きな声が飛び交う。世界中の注目が僕に集中する。驚嘆、喝采、羨望も嫉妬も全部、全部僕のものになる。
報道陣は手のひら返し過ぎて腕がねじ切れてしまったんじゃないかというくらい態度が一変した。
……しかし、それは、良いことばかりではなかった。
僕に対するドーピングを疑う論調が瞬時に噴出。僕は疑惑を思いっきり掛けられてしまった。
勝手な憶測だけでドーピング確定とか言い出す人達もたくさん出てきて、僕は全世界から袋叩きに合いそうになったのだ。
まるで、完全に腕がねじ切れてしまって、無数の手のひらがプロペラのように回転しながら在らぬ方向へとすっ飛んで行く、というあり得ない光景が目に見えるかのようだ。
急遽、僕だけにあらゆる種類のトーピング検査が再実施されて、少しでも、一つでも、反応が出やしないかと次から次へと試された。
それでも、僕はどの検査にも引っ掛からなかった。
当たり前だろう、僕は不正など何一つしていない。
正真正銘、僕の努力と才能が完全に融合して大輪の花を咲かせた結果であるということがここに証明された。
文句など誰にも一言も言わせはしない!
なのに、僕は……
……幽閉された。
僕の飛び抜けた能力のせいで、僕は逆に世界中の国々から狙われる存在になってしまったのだった。
今となっては、もっと抑えた世界新記録に留めておくべきだったと、後悔しきりだ。
もっと更新ステップの小さい記録で人々の気持ちを慣れさせていくべきだった。
僕の記録の出し方は、人智で処理できる範疇には無いものだったのだ。
学者はどういったメカニズムで、人類があそこまでの記録を出せるようになるのか、徹底的に調べ上げるべきだ、と言った。
スポーツを代理戦争として利用する政治家は超優秀なアスリートを量産したいと画策していて、僕をその材料にしたいみたいだ。
僕にまで手が届かなさそうな国は、こっそり、僕を消そうとする。僕だけでなく、僕の所属する国の株が上がり注目されることに対して羨望の目を向ける国も数多いとのこと。
僕は全世界の英雄どころか、この世界でまともに生きていける場所と時間を、あの瞬間に失ったのだった。
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
超人幽閉! ~精巣ドーピング~
OpusNo. | Novel-042 |
---|---|
ReleaseDate | 2017-07-07 |
CopyRight © | 山牧田 湧進 |
& Author | (Yamakida Yuushin) |
Circle | Gradual Improvement |
URL | gi.dodoit.info |
個人で楽しんでいただく作品です。
個人の使用範疇を超える無断転載やコピー、
共有、アップロード等はしないでください。
(こちらは体験版です)