ローションタッグマッチ 体験版
【まえがき】
※[ご注意ください]
【あらすじ】
藤橋がよくお世話になっていた他団体の代表、武本から久し振りのオファーが届いた。
二人は相思相愛でありながら、お互い気付かずに年月だけが経過してしまっていた。
武本は藤橋似でやや小柄な団員と付き合いながらも、藤橋のことが諦めきれずにモーション掛けようと企んでのオファー。
藤橋はファンから同じ団員となった誠太と付き合いつつも、リング上では常に敵対する立場にならざるを得ないことから、他団体への出向なら敵対せずにペアになれると考えタッグを提案。
微妙に噛み合わない思惑で迎えた試合はローションタッグマッチ。
武本は藤橋の変化と誠太の態度から確信を持ち、かつてない大胆なモーションを仕掛ける。
ローション塗れでぐっちゃんぐっちゃんに組んず解れつした挙句、藤橋を全裸にひん剥く武本。一人スポットライトを浴びながら超完全勃起を観客に晒してしまう藤橋。
試合後のリング上で、武本はタチ一人ウケ一人、相手指定、先にイカせた方勝ちのタッグマッチ延長戦を布告するが、躊躇する藤橋より先に武本への嫉妬に燃える誠太が応戦宣言をしてしまう。
【主な登場人物】
【目次】
「ぉおおお」
スマホを手に、俺は思わず声を上げていた。
「どうしたんですか?」
練習場を掃除していた野辺院誠太(フランク
「いや、久し振りのお誘いが来た、と思ってな」
「何のお誘いなんです?」
「プロレスの試合。うちが昔、経営が安定していなかった頃、よくお世話になっていたんだぁ」
「へぇ、そうなんですか。僕がまだ藤橋さんを知らない頃の話ですかね。知ってたら見に行ったはずだもんなぁ……」
「そうだ!」
俺は閃いて、突然大声を上げた。左斜め上に顔を振って、誠太を見上げる。
(相変わらず可愛いな。特に見上げる角度は格別なんだ。)
「狩断印も出てみないか?」
(練習やなんかでも観客やら部外者が居ることも多いから普段からリングネームで呼ぶように徹底してるんだ、一応。)
俺はその先の誠太を想像して、少しニヤニヤしながら問い掛けた。
「はい、藤橋さんがそうおっしゃるなら、出させていただきますけど……」
誠太はまだ今一つ要領を掴んでいない感じで、当たり障りのない返答をしてきてる。
俺は右手で緩いコの字を作って口鼻の脇に当てて、内緒話風を装ってみる。
その俺の様子を見て少しかがんで顔をやや近付けた誠太に、
「タッグ組めるかもよ」
あまり小さな声にはしなかったが、わざとボソボソとした棒読み口調で話してみる。
その瞬間、誠太の顔がぐんとぶつかりそうな勢いで近付いてきた。
「本当ですか!?」
「ああ」
「タッグって、藤橋さんとチームが組める、ってことですよね!?」
誠太が身を乗り出しながらも、しつこく確認をするのには訳がある。
誠太は元々、俺のファンでいてくれてた奴で、俺を慕って入団希望までして来てくれた奴だ。
だけど、誠太の奴、基本はハンサムだし甘めマスクの好青年なんだけど、ちょっとおでこが大きくて目のすぐ上で出っ張っているんだ。そのせいで鋭い目付きが悪く見えることが多くて、それで奴はヒール(悪役)担当になっちまった。
俺はその正悪の区切りで言うと正義(ヒーロー)の側だから、俺と誠太がタッグを組めるということはまずあり得ないんだ、残念ながら。
……だけどそれは、うちの団体『天辺』(てっぺん)の中だけの話。
外部団体に少人数で出向くだけならうちの団体の設定とか関係なく行けるから、別に誠太がそこでもヒールをやらなければならないなんていう制約は無いのだ。
だから、外に出向くときだけは俺達はタッグを組める。そういう訳だ。
「ちょっと提案してみるよ。まぁ、却下されたらゴメンな」
「いえ、是非、よろしくお願いします!」
誠太の返答には目一杯力が篭っていた。
提案してみたら、割とあっさり『こっちもめぼしいの一人選んどくわ』って回答が返ってきた。
練習生も交えた団体の皆が居る食事の場で結果を誠太に伝えると、奴は拳振り上げてガッツポーズしながら立ち上がろうとしたみたいだけど、ご飯溢しそうになって途中で半端に止まっていたっけ。
俺ら二人だけのためにうちの団体全体が休んじゃうと却って経営的にマイナスになってしまうから、自分達だけが休日出勤みたいに休み減らして行くことになっちゃったけど、誠太はずっとニコニコしてた。俺もだけど。
付き人要らない、休んでくれ、って言ったんだよ。
だから、今回の出向は俺と誠太の二人きり。
仕事だけど、小旅行のデート気分でもあるんだ。
そう、俺達、ありがたいことに、デキてます。
ちょっとしたアクシデントがあって、謝られて、告られて、そのままなし崩し的にデキちゃった。
普段、誠太は俺を敬ってくれているんだけど、アノ時だけはあいつがトップ。俺は良いようにされるがままだ。ま、俺は確かにボトム(受け)なんだけどさ。
本来、うちの団体ではリングネームのある奴は普段からリングネームで呼ぶ、って仕来たりにしているんだけど、あのとき以来、俺は勝手に心の中では『誠太』って本名で呼んでいる。自分が作った決まりを自分で破っているんだけどな。
でも、それも……
出向の打ち合わせをした夜。
「どんな展開にするかとか、もう決まっているんですか?」
「いや、それが、『細かい打ち合わせは不要だから当日現場で話す』、って言われててさぁ」
「へぇ、そうなんですか」
「でも、トリだってさ」
「へぇ、そんな大役を。僕なんかで良いんですかね?」
「ああ。それよりさ、向こうでの試合のときの話だけどよ、うちの団体の設定を引き摺る必要なんか一切ないんだから、『フランク狩断印』じゃなくて『野辺院誠太』で出ないか?」
「えぇ、良いですよ」
「それじゃ、誠太。向こうの試合の話のときは『誠太』って呼ぶからな?」
実は俺、これを狙ってただけだったりして。
「あ、はい、お願いします。藤橋さん」
はあぁ、やっと普通の呼び名でラブラブな会話ができるぜ。
「そいでさ、なんでか知んないけど、『コスチュームは汚れても良いようにあまり手の込んでないものにしてくれ』とか言われてるんだよ。わざわざ言ってくるくらいだから、普通の試合やる以上に汚れるってことなんだろうけど、何やるんだか教えてくれなくてさ」
「それも当日?」
「うん。だけど、まぁ、うちらのコスチュームもそんなに手が込んでるってほどでもないけど、それ以前にほら、いつものだと、ヒーローとヒールじゃん。イメージが」
「そうですね。そのままで行ったら、チームなのに変かも」
「だからさ、どうせだからこの際ペアで専用の揃えてみない?」
「例えば、どんなのですか?」
「伝統的な無地のショートタイツ。色違いでどう? ブーツも合わせてさ」
すると、誠太の奴、意外にも超ノリノリだった。
「良いですねぇ! やっぱ、基本ですよね! 無地のタイツ」
「誠太は何色が良い?」
「やっぱ黒ですかねぇ、って、藤橋さんが先に決めてくださいよ」
「いや、俺は黒似合わないから、誠太が黒で良いよ。俺は……」
「赤! 赤ですよ、藤橋さんは」
食い気味に誠太が言ってくる。先に決めろって言っておいて、全部誠太が決めちゃってるじゃん。
「あー赤のショートタイツ姿の藤橋さん、格好良さそうだなぁ」
誠太の奴、腕組んで目瞑って上見上げて妄想モードに入っちゃってるよ。
「おいおい、本人がお前の目の前に居るぞ」(棒読み)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
(こちらは体験版です)
ローションタッグマッチ
OpusNo. | Novel-041 |
---|---|
ReleaseDate | 2017-05-14 |
CopyRight © | 山牧田 湧進 |
& Author | (Yamakida Yuushin) |
Circle | Gradual Improvement |
URL | gi.dodoit.info |
個人で楽しんでいただく作品です。
個人の使用範疇を超える無断転載やコピー、
共有、アップロード等はしないでください。
(こちらは体験版です)