俺の砲丸投 体験版

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【まえがき】


※[ご注意ください]



【あらすじ】


 憧れで、目標で、超えなければならない壁。


 同じ学校、同じ進路。

 この競技を始めてから、俺は常に先輩の後を追い掛け、追い越そうと努力してきた。

 でも、なんだか今ひとつ実感が湧かないのは、学年が5つも離れているから。

 現実には対戦することのない人の、記録だけを追い掛ける。同じ学歴なのに。

 ……って、その先輩はまだ大学に(正確には大学院に)在学していて、一緒に練習したこともあったらしいのに、全然気付いていませんでした、俺。


 だって、俺よりデカい人だとしか思ってなかったもんよ。って、何をどう言っても言い訳にしかならないけどよ。

 でも、よく見れば、背は低いものの体幹はがっしり。確かに、実力者であることには違いは無かった。

 でも、それよりも気になるのが、お子ちゃまみたいな可愛らしい顔と正反対を行く怒涛のくっきりはっきりもっこり。

 その投擲にも、身体にも、顔にも、あそこにも、衝撃を受けまくった俺はその日から先輩のことばかり思うようになっていた。


【主な登場人物】




【目次】


表紙

まえがき

あらすじ

主な登場人物

第1章 打倒! 門間勝人先輩!

第2章 三ヶ月も気付かずスルー

第3章 差あり過ぎでしょ

第4章 近付けたのに届かない

第5章 腹癒せに寝取る

第6章 実物とご対面

第7章 憧れの先輩を扱き倒す

第8章 この砲丸も俺のもの

奥付

第1章 打倒! 門間勝人先輩!

 陸上部っていうと、スリムなアスリートっていうイメージがあるだろう?

 速さを競う、長さを競う、高さを競う。身体が軽いことが直接武器になる競技が多いからだろう。

 だけど、身軽であることがほとんど意味を成さない競技もある。


 投擲。


 砲丸投、円盤投、ハンマー投、やり投。

 これらは飛距離を競う競技だが、幅跳びとは異なり、自分自身が飛ぶのではなく、物を飛ばす競技であるため、自分自身が身軽であることにはあまり意味が無いのだ。

 だから、アスリートといっても、投擲専門の競技者はちょっと趣きが異なる。

 中でも、砲丸投は7kg以上もある重い鉄の球を、投げるというよりは押し出しているように見える形で飛距離を競う。(いや、最終的にはきちんと投げているのだが)

 それ故に、重い質量を強く速く射出する筋力と、重さや反作用に負けない土台が重要であり、身体が重いことが不利になりにくいのだ。

 そういう意味では、どちらかと言うと重量挙げやパワーリフティングなどの力を競う競技に近いものがあるのだが、そういった競技は体重で階級分けされていることが多く、やはり、単純に身体を重くするわけにはいかず、筋力と体重のバランスを非常に気に掛けることになる。

 その点、砲丸投には体重による階級分けなどは通常無く、身体の動きが鈍くなるなどの不都合が生じない限り、無制限に体重を増加できる競技とも言え、そういった意味では若干、相撲に近い競技とも言えるのかもしれない。

 もちろん、体重増が必ずしも記録向上に繋がるとは限らないのだが、それは相撲でも同じことだ。




 学校の正面玄関を入ったすぐのところにショーケースがある。

 もう、5年も前の記録。目線の高さの、一番目に付き易いところにトロフィーと賞状が飾られている。

 多分鮮明な赤だったのであろうリボンは既に色褪せ始めていて、どちらかというとピンクと言う方が近い、という位の色合いになっている。逆に白は日焼けして少々黄ばみ始めている。


 入れ替わることはできなかった。

 鮮やかな赤と白で置き換えることはできなかった。

 俺がこの3年間頑張っても、この場所の景色を変えることはできなかった。


 門間 勝人(かどま かつひと)。

 校内ではもちろんのこと、今だに県の記録保持者だ。

 ただ、彼も、高校を卒業して砲丸の重さが更に重くなってからは、全国レベルの大会ではあまり目立った活躍はできていない。日本のトップクラスにまでは届いていなかった。

 それでも、県内では未だにこれを超えられる人が存在しないわけで、校内に誇らしげに展示され続けるのも当然のことなのだ。


 そして、俺は、そこに届いていない。

 とはいえ、俺だって大会記録の一つくらいは持っている。大会は一つきりじゃないからな。

 砲丸投は安定した成績が出し難い競技だ。駄目なときは本当に駄目な記録しか出せない。故障だって多いしな。

 だから、全ての大会で俺の成績が門間先輩に届かなかったわけではない。

 でも、大会記録として俺の名と記録が載っているそのすぐ上に、県内記録として先輩の名前と俺よりも大きな数値が載っているのだ。


 俺ももう4年間、頑張ってみようと思った。

 一般男子の砲丸は高校よりもさらに20%以上重くなる。

 そうなると、パワーバランスは変わる。

 ここで力負けを起こす選手は記録をがっくりと落とすことになる。センスや技術に長けていても乗り切れないケースが出てくるのだ。

 ラフに言ってしまうと、力バカの方がより有利になる。もちろん、それだけではトップレベルには到底届かないというところは全く変わらないのだが。


 スポーツ推薦で早々に内定した大学は体育系の学科が主体の大学だった。

 しかし、それも先輩が付けた道筋。

 この高校とその大学とは、門間先輩が作った実績により太いパイプが出来ており、俺が大学でも砲丸投をやりたいと言えば、自ずとこの進路が浮かび上がってくるのだった。

 なんだか二番煎じ的な、あるいは二匹目のドジョウ的な若干微妙な気分にもなるが、俺は期待されてもいた。

 高校記録では超えられなかったが、学生記録や一般記録でも超えられないとはまだ決まっていない。

 俺は門間2号として、県からも大学からも門間超えを期待されていたのだった。


 でも……。

 5学年も離れていると、学生大会であっても一緒になることは無く、もし、一緒になれる機会があるとしたら、門間さんが大学を卒業しても競技を続けていることが必須条件で、両者ともに学生だけではない一般の選手も参加する同じ大会に出場するしかない。

 見えない人を追い掛けるのって、実感が湧かないよなあ。

 どうしても、数字だけを追い掛けている気分になる。でも、数字だけなんだったら、まだまだ、もっと上の数字もいくらでもあってキリがない。そう考えてしまうと、うんざりしてやる気も地面に吸い込まれるように消えて無くなってしまいそうだ。


 4月を迎えて、実際に大学に入学して陸上部に入部すると、新入部員の中で俺の成績はほぼほぼトップだった。つまりは、調子さえ悪くなければ確実にトップが取れた。他の都道府県からも有望株が入部してきているのであろうことを考えると、なかなか健闘しているのではないだろうか。

 砲丸が重くなって、俺でも明確に飛距離が落ちたが、もうこの先、砲丸の重さがこれ以上重くなることは無い。

 この重さに早く慣れて、力を付けていけばなんとかなる。俺はそう思っていた。

 そして予想通り、ここにも、この大学の記録にも門間先輩の名前が残っていた。

 俺は今度こそ、今度こそ塗り替えてみせる。

 打倒! 門間勝人先輩!


(こちらは体験版です)

第2章 三ヶ月も気付かずスルー


(こちらは体験版です)

第3章 差あり過ぎでしょ


(こちらは体験版です)

第4章 近付けたのに届かない


(こちらは体験版です)

第5章 腹癒せに寝取る


(こちらは体験版です)

第6章 実物とご対面


(こちらは体験版です)

第7章 憧れの先輩を扱き倒す


(こちらは体験版です)

第8章 この砲丸も俺のもの


(こちらは体験版です)


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俺の砲丸投


OpusNo.Novel-036
ReleaseDate2016-07-08
CopyRight ©山牧田 湧進
& Author(Yamakida Yuushin)
CircleGradual Improvement
URLgi.dodoit.info


個人で楽しんでいただく作品です。

個人の使用範疇を超える無断転載やコピー、
共有、アップロード等はしないでください。

(こちらは体験版です)

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