育む『罰』 体験版

Cover


【まえがき】


※[ご注意ください]



【あらすじ】


 その者は育てたかった。

 例えるなら、砂漠に緑を育て、増やし、豊かにしたかった。

 しかし、蒔いても撒いても、芽すらも出ない。砂漠の砂漠たる所以を見せ付けられるばかりだった。


 そんな中、たった一つだけ、大きく立派な果実が育った。

 大切にしたかった。

 だが、大切なものほど、奪い去ろうとする者が現れる。


 彼は愛を与えたかった。でも、時代が、人が、それを許さなかった。

 だから、彼は代わりに罰を与えたのだ。自ら罪を犯しながら。

 そして、二人で育んでいったのだ。


【目次】


表紙

まえがき

あらすじ

第1章 砂漠に育った大果

第2章 もう、我慢ができぬのだ

第3章 言えない言葉をぶつけ合う

第4章 同時に育つ『嫉妬』

第5章 罰が罪を生み繰り返す

第6章 これ以上、奪われぬ為に

第7章 意思と罰を受け継いで

奥付

第1章 砂漠に育った大果

 ここは辺境の田舎町。少々、どころじゃなく治安が悪い。

 ここではまだ、貧富の差が激しくて、人種差別の問題も、宗教戦争もある。

 もしも、多くの富というものが実はあって、それがみんなに行き渡れば良いのに、富というものの存在は、本当にあるものなのか分からなくなるくらい、ほとんどの庶民には全く見えない、縁が無いものだ。


 そんな、偏りだらけの地方だから、当たり前のように一夫多妻制もあるし、識字率も低く、貧乏な家の子は学校に通えることもなく、小さなうちから富豪の家の使用人として働きに出る。

 いや、働きに出られるのならまだマシな方なのかもしれない。


 生み出される物が少ないから、奪い合いになって、余計に破壊されていく。

 作り出そうとした物が、出来上がる前から、根こそぎ盗られていく。

 庶民はやる気を失い、現実逃避に走る。

 食うにも困るほど貧しいのに、何故か、いったいどこから仕入れられるのかさっぱり分からないが、怪しい嗜好品だけは僅かにいつもそこにあって、大人達はいつでも、酩酊するほどにその嗜好品を隅の隅までしゃぶりつくす。


 酩酊するのは現実逃避からだけではない。

 狂ってしまえば、空腹を感じなくても済む。飢えの辛い感覚からも一時だけだが逃がれられるのだ。

 だが、そんな嗜好品は必ず身体を蝕む。

 あっという間に命は削れていき、しかし、その命の危機感が、種の保存の本能を煽り立て、僅かな体内資源を生殖へと振り向けてしまうことにもなる。

 結果、食い扶持だけが増える、という悪循環。


 そんな、最初から最後まで破綻している町にも、どうにかして建設的な方向へと引っ張る努力を続けている人が存在していた。


 牧師『スチュワート』。彼は生粋の牧師ではない。

 彼は若いうちに大きな成功を収めて、巨万の富を得た。その莫大な資産を持って、この土地に移り住んで来た変わり者だ。

 彼は既にビジネスの世界からはリタイアしていて、その後に牧師の道を志した人物だった。


 彼は、自らの資産を全てこの土地にばら撒く覚悟で移住してきた。

 だから、彼はこの土地で吸い上げるようなことはしない。分配する。

 まるで砂漠に水を撒くみたいに、すぐに何処かへと消えていってしまって、なかなか芽生えることすらないが、それでも、彼の周辺だけは、幾分か平和な環境が実現されているようではあった。


 彼は、本来ならば必要としないほどの、多くの使用人を雇っていた。

 人数が多い分仕事が楽で、彼の家には賑やかに談笑する使用人達の姿が良く見受けられた。

 彼、スチュワートは白人であったが、使用人は全員、黒人だった。そう、ここはまだ、人種による差別と格差が色濃く残っていたところだった。


 彼の家で働くには条件があった。

 それは、学ぶこと。

 この時代に、この土地で学ぶためには、必然的に彼と同じ宗教に入信し、彼と同じく信仰を重ねることになる。

 彼は時間を作っては、使用人達に読み書きなどの勉強も教えていた。


 争いが起こる理由の最たるものは、飢えと貧しさだ。

 貧しいというのは何も金銭的なことばかりを指すのではない。心にも貧しさは存在する。

 勉学はそうした心の貧しさを、幾分かではあるが、豊かにしてくれる。


 そんな彼が、ある日、一人の物乞い少年に出会った。

 この辺りでは、たまに見かけることがある、中途半端に浅い黒さの肌。

 格差と差別に溢れたこの町でこういう子供を見かけたとき、考えたくはないが、考えられることはただ一つ。

 望まないセックスにより望まない妊娠をした、望まれなかった子供、だ。

 強引なものだったのか、売りまくった結果なのかまでは、分からないが。

 なぜ、今まで気が付かなかったのだろうと、彼は思ったのだが、少年がこうしてこの町で物乞いをするようになったこと自体が、つい最近のことなのかもしれない。


 彼は、家に空き部屋が無いか、記憶を辿ってみた。

 空いている部屋は無かったが、片付ければ空けられるであろう物置部屋があることを思い付いた。

 狭くて暗いが、いつ何時、身の危険に遭遇するかも分からない町の路上にずっと居るよりかは遥かにましだろう。

 彼は少年を家へと連れて帰ったのだった。


(こちらは体験版です)

第2章 もう、我慢ができぬのだ


(こちらは体験版です)

第3章 言えない言葉をぶつけ合う


(こちらは体験版です)

第4章 同時に育つ『嫉妬』


(こちらは体験版です)

第5章 罰が罪を生み繰り返す


(こちらは体験版です)

第6章 これ以上、奪われぬ為に


(こちらは体験版です)

第7章 意思と罰を受け継いで


(こちらは体験版です)


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育む『罰』


OpusNo.Novel-028
ReleaseDate2015-11-21
CopyRight ©山牧田 湧進
& Author(Yamakida Yuushin)
CircleGradual Improvement
URLgi.dodoit.info


個人で楽しんでいただく作品です。

個人の使用範疇を超える無断転載やコピー、
共有、アップロード等はしないでください。

(こちらは体験版です)

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