豪傑さん 体験版
【まえがき】
※[ご注意ください]
【あらすじ】
たまたま立ち寄った街で日銭稼ぎの立ちん坊をしていた俺を買ったのは見たことのない身体をした巨漢だった。
豪快な身体に爽やか性格のぱっと見より若いであろうその男は特に男好きというわけではなく、単に女ではその男の身体を受け止め切れないから男を買うのだという。
しかし、その男はまるで普通の男同士のセックスをしてきた。身体の相性も最高で、休憩は延長して宿泊となった。
これはその日一泊のお話です。
俺は住所不定無職。だが、ニートとはちょっと違う。勝手気ままに放浪しながら暮らす根無し草だ。金が足らないときは取っ払いのバイトをしたりして凌ぐが、時には今日みたいなケースもある。
建物が密集している割に活気が無いように感じる裏寂しいホテル街。何も用事が無さそうにその辺に立っている女が数人いたら、そこはそういうところだ。
そういうところに同じ様にしれっと立っていると、年老いた女よりは先に買い手が付いたりする。
その日もまたそんな感じだった。
誰かを待っているような、いないような、曖昧な態度でホテルの角に立つ。時折、駅の方向から、いい歳した酔っ払いリーマンやら、日雇い労働者風やらがやってきては俺の遥か前方に立つ女を引っ掛けてホテルへと消えていく。
取り敢えず、早々に売れる女達が一掃されないと話にならない。俺はこの女になら勝てる、あるいは勝負できるだろうと思える女より前に、この女には勝てないだろうと思われる女より後に陣取っていた。
一人、前方にいる女達を全く引っ掛けようともせずに俺の方まで歩いてくる男がいた。薄汚れた、上は緑、下は黒いスウエットの巨漢。如何にもブルーワーカーな出で立ち。ここまで素通りしてきたのなら、買いに来た男ではないのかもしれない。しかし、その容貌が次第にはっきりと見えてくると、俺の目は釘付けになってしまった。
一体どうなっているんだ?、あの身体。
何と言っても、最初に目に付くのは緑の膨らみ、とにかくその巨大な腹だ。しかし直ぐに、その下方にある黒の膨らみへと目が行ってしまう。その膨らみがいやらしくその重量感と重心の安定感を主張しているのだ。
色違いのラインはまぁ分かるくらいの低さで、弓なりに中央がやや下がる、まぁ、太った人にはありがちなフォルムと言えなくもない。それでも、そのラインは肥大化した尻に持ち上げられたもので、実際の足の長さはもっと短く、股間の位置ももっと低くなるのも分かる。それにしても、この低さ!
一方で、両足に着古して付いたであろうでっぱりと色褪せと汚れの跡、あれは多分膝だろう? 足の短さの割には妙に膝の位置が高くて、中央の盛り上がりと横並びに近い高さにある。
その中央の盛り上がりも、腹の贅肉が多過ぎて膝の位置まで垂れ下がってしまっているのだったらまだ分かる。でも、あの盛り上がり方は明らかにアレ、というか、確実に大きさも形も誇示している。あれだけ巨大な腹を持ちながら、腹肉が垂れ下がって股間を隠してしまうのでもなく、周りの脂肪に埋没しているのでもない、ハッキリと存在を主張している股間。
俺がその股間に目を奪われている間に、その巨漢は徐々に俺に近付き、しかし、ある一定の距離以上には縮まらずに俺を通り過ぎて行った。
俺はあからさまに振り向くわけにもいかず、横目が追い付かなくなる時点で目で追いかけるのを諦めた。
はーっ、凄え身体もあるもんだ。俺はスルーされたことも気にならず、ひたすら感心していた。というか、股間にばかり目が行ってしまっていたので、どんな男だったのかもさっぱりチェックできていなかったのだ。
ひとしきり感心し尽くした後、少し冷静になってくると、もっと全体をチェックしとけば良かったなと後悔し始めた。あの人間離れした体格に、いったいどんな顔が付いていたのだろう? やっぱり、手も指も太いのかな?
俺はその場にボーっと立ち尽くしたまま、ぐるぐると思いを馳せていた。
……ちょん、ちょん。ふと、後ろから誰かに指を小突かれた。
現実に引き戻されて振り返ると、そこに居たのはなんと、さっき通り過ぎて行ったあの巨漢ではないか!
あれだけ『全体をチェック』しておけば良かったと後悔していたのに、いざ間近にその男を見ると、やっぱり目はそっちの方に向いてしまう。至近距離からだと見下ろすような形になるから大きな腹に隠れて見えなくなってもおかしくないのに、この位置からでも堂々と見えるなんて。
俺がついその股間だと思われる盛り上がりを凝視してしまっていると、
「いやぁ、恥ずかしながらもう、ちょっと勃っちゃってるんだよね」
と、意外にも好青年風の爽やかな声質が聞こえてくる。
思わず顔を上げると、荒くれ親爺かと勝手に想像していたその顔は色白で血色が透けて見える。よく見れば結構整っていて、痩せていれば普通に二枚目で通りそうだ。太っている分、顔にもそれなりに肉が付いてはいるのだが、垂れているとは言わなくても良い程度に収まっていて、ギリギリ二重顎を回避している。スキンヘッドに近いド短髪が良く似合っていて、太っている人としてバランスの良いおっさんの入り口に差し掛かった顔だ。もしかしたら、パッと見よりも若いのかもしれない。
「高い?」
その人の声にハッと我に返り、慌てて返答する。
「いや、若い女みたいには取れないから……」
「これで良い?」
左手のぶっとい指が5本広がる。というか、指もさることながら、この手のひらの厚み……なんじゃこりゃ。
(こちらは体験版です)
豪傑さん
OpusNo. | Novel-002 |
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ReleaseDate | 2014-07-30 |
CopyRight © | 山牧田 湧進 |
& Author | (Yamakida Yuushin) |
Circle | Gradual Improvement |
URL | gi.dodoit.info |
個人で楽しんでいただく作品です。
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(こちらは体験版です)