合法的に人格を破壊する方法 体験版

Cover


【まえがき】


※[ご注意ください]



【あらすじ】


 もしも、その人の人間としての器はそのままに、中身だけを破壊することができてしまったら。それも、非合法なやり方を全くすること無しに。


 特許としても公開されていない極秘の研究成果と技術を、ただ、その目的のためだけに、惜しみなく資金と時間と能力を投入して完成させたとある組織。

 君はその組織に捕縛され、被験者となってしまう。

 外見上全く無傷で無事なまま、内部的に完全抹殺されてしまう君。


 でも、問題無い、大丈夫だ。

 君には気持ち良いだけの幸せな未来が約束されているのだから


【目次】


表紙

まえがき

あらすじ

合法的に人格を破壊する方法

奥付

合法的に人格を破壊する方法

-1

「ちゃんと聞こえているかな?」

 白衣に眼鏡の、いかにもマッドサイエンティストな風体をした博士なる人物が口を開いた。

 だが、君にはその姿は見えていない。君の視界は特殊映像を映し出す装置をセットされたことで完全に奪われている。今は映像は流されていなく、真っ暗な状態だ。

 そして、君の耳も密閉されていて、聴覚も完全にコントロールされている。現在聴けるのは博士の声だけだ。

「これからキミに、一つ、話をしてあげよう」

 博士は続ける。


 とある、優秀な人材がちょっとした隙を突かれて、組織に拉致されてしまった。

 組織は、彼の知り得る極秘情報を欲しがっていた。しかし、彼は何をされても一切口を開かなかった。

 そのうえ、そうこうしているうちに、逆に、彼はその組織が何者なのか、感付いてしまった。

 そうなると彼は一層頑なになった。組織はむしろ、彼に自決されないように気を使わなくてはならなくなった。

 このまま解放することはできない。さりとて、生命を消滅してしまっては面倒なことになる。

 そこで、組織は彼を生かしたまま、彼の人格を完全に破壊することにした。しかも、合法的に。

 その後、彼を解放しても、誰も犯罪を証明できない。彼の記憶ももちろん、跡形も無い。


 博士は君の姿を下から上へとめ上げるように見た。

 君は全裸で拘束されていて、口にはマウスピースをめられている。これはすなわち、舌を噛み切られないための措置である。


「分かっているだろうけれど、この話の『彼』とはキミのことだよ」


 これからキミの身に起こることは、完全部外秘の特秘事項。内部の、それもごく一部の人間しか知らないことだ。

 『そんな重要なことを部外者であるキミにべらべらと喋ってしまって大丈夫なのか?』とか思うかい?

 大丈夫なんだなこれが。

 キミがこのことを覚えていられる可能性は確実にゼロに等しいからね。絶対の自信と実績がある。

 分かるかい? キミが初めて、一人目の被験者じゃあ無いんだ。もう、何十人と先人達が居る。だから、実績があると言い切れるんだ。

 だから、キミには全てを話してあげるよ。

 あっと、その前に。キミの声帯が閉じないように生分解性の部品を嵌めさせてもらっているよ。今、キミはいくら声を出そうとしても声にならないけれど、大丈夫。キミが解放される頃には部品は消滅して、声が出せるようになっているはずだから。

 『声を出す気など端から無い』とか思っていたりするかい?

 多分、そのままだと、キミはこれから散々喚き散らすことになるよ。そのままにしていたら、声帯が傷んじゃうだろうね。


 君は試しに、何の意味も無い声を微かに出そうとしてみた。だが、確かに、声帯が閉じる感覚は全く起きず、もちろん、全く声にならなかった。


 キミは脳内麻薬の存在を知っているよね。

 通常、脳内麻薬の分泌は頭脳にダメージを与えるほどの量にはならないように自律的にコントロールされている。

 例えばこれが、限りなく分泌を続けるようになっちゃったらどうなると思う?

 自分の分泌する物質でラリっちゃって、ぶっ壊れちゃうんだよ。恐ろしいね。

 『そんな際限なく分泌などできるわけがない』って思うだろう?

 そこで、西洋医学的なアプローチを幾つか行って、分泌が止まらないようにしてあげるってわけさ。

 西洋医学ってのはある意味不気味だよね。人間の感覚はアナログで、『健全な精神は健全な肉体に宿る』とか『病は気から』とか言っているのに、西洋医学はそこを論理的なシステムとして割り切ってしまっている。

 良いかい、人の身体を論理システムとしてしか見ないんだ。

 痛みを抑えるのに、痛みの原因に対処などしなくても、痛みの感覚の通路で阻害してしまえば良い、痛みを感じる器官を機能しなくさせてしまえば良い、ってのが西洋医学的アプローチってやつだ。

 足りないものは供給してあげれば良い。余計なものは作らせないようにするか、作ってしまっても伝達系や受容体でブロックしてしまって、次の反応を起こさせないようにすれば良いんだ。

 そうやって、不必要な回路は切断して、必要な回路はいつまでも機能するようにコントロールしちゃう。

 それが出来ちゃうから恐ろしいよね。論理システムとして人体を弄る西洋医学は、意図的に暴走するシステムも構築可能なんだよ。

 ……フフッ。


 博士は一息吐いた。ブラックのコーヒーを一口飲み込む。


 で、人間に尋常じゃない量の脳内麻薬を分泌させるにはどうしたら良いか?


(こちらは体験版です)


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合法的に人格を破壊する方法


OpusNo.Novel-018
ReleaseDate2015-05-23
CopyRight ©山牧田 湧進
& Author(Yamakida Yuushin)
CircleGradual Improvement
URLgi.dodoit.info


個人で楽しんでいただく作品です。

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(こちらは体験版です)

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